この世界は、好都合に未完成。— 久能山東照宮で出会う、未来へ続く美学 —
「この世界は、好都合に未完成。」
サカナクションの楽曲『怪獣』に登場する一節です。
15世紀ヨーロッパを舞台に、「地球は動いている」という当時の常識を覆す考えを信じ、命がけで研究を続けた人々を描いたアニメ『チ。―地球の運動について―』の主題歌としても話題になったこの曲には、まだ解き明かされていない世界や、“完成していないからこそ前へ進める”人間の営みが描かれているように感じます。
そして、この言葉を聞いたとき、私はある場所を思い出しました。
静岡にある、久能山東照宮です。
完成させないことで、未来を願う
徳川家康公を祀る久能山東照宮は、豪華絢爛な社殿と、駿河湾を望む絶景で知られる名所です。
けれど、この場所のおもしろさは、実は細部にあります。
境内には徳川家の象徴である「葵の御紋」が数多く見られますが、その中には“あえて未完成”にされているものがあると言われています。


昔は、「物事は完成した瞬間から衰退が始まる」と考えられていました。
だからこそ、最後まで仕上げず、さらなる繁栄や平和への願いを込めたのです。
完成より、継続。
到達点より、その先へ続く未来。
400年以上前の人々が残した思想は、驚くほど現代にも通じています。
『チ。』が描いたものにも、どこか似ている
『チ。―地球の運動について―』もまた、「完成された正解」に抗いながら、まだ見ぬ真実を追い求める物語です。
常識とされていた世界は、本当に完成していたのか。
まだ知られていないことがあるから、人は進み続けられるのではないか。
そんな問いかけは、久能山東照宮に残る“未完成の美学”とも、どこか重なって見えます。
実際に訪れると、景色まで語りかけてくる
この場所は、知識として知るだけでなく、実際に足を運ぶことで印象が大きく変わります。
1159段の石段を登るルート。
一段ごとに近づいていく非日常感。
登りきった先に広がる駿河湾。
陽の光を受けて輝く、極彩色の社殿。
「ここに来てよかった」と、素直に思える景色があります。
体力に自信がない場合は、日本平からロープウェイで向かうことも可能です。
空中から久能山へ向かうルートも、また格別です。


この世界は、好都合に未完成。
仕事も人生も、つい“完成形”ばかり求めてしまいます。
けれど、余白があるからこそ成長できる。
答えが出きらないからこそ、考え続けられる。
そう思うと、“未完成”は欠点ではなく、希望なのかもしれません。
静岡を訪れる機会があれば、ぜひ久能山東照宮 へ。
そこには、400年以上前から未来へ向けて残されている、静かなメッセージがあります。




















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